
『映画を愛する全ての人に送る、とびきりロマンチックなラブストーリー』
今回紹介するのは、「今夜、ロマンス劇場で」。
映画監督を目指す青年の目の前に、憧れの女優がスクリーンを飛び出して現れた!
と言うお話ですが、お転婆なお姫様が退屈な世界を飛び出して一般市民と恋に落ちると言う点は「ローマの休日」を彷彿とさせますね。
映画が大好きな主人公の前に、登場人物が映画の世界を飛び出してくると言うのはウディアレンの名作「カイロの紫のバラ」と同じ構図。
そんな映画好きの心をくすぐる設定が盛りだくさんなわけですが、
まずはその典型的な「わがままお姫様と、そのわがままに振り回されながらも魅力に惹かれていく主人公のラブストーリー」に思う存分キュンキュンしちゃいます!
ツンとしたお姫様と言う役に綾瀬はるかがバシッとはまっているし、昭和レトロでクラシックなドレスが本当に似合う。
彼女のモノクロな体を隠すために、衣装部屋で新しい服に着替えさせ、化粧をさせるシーンがあるのですが、
新しい衣装に着替えた彼女が登場した瞬間は、誰もがため息をつく美しさ。
これは、その昔モノクロ映画しかなかった時代に、カラー映画を初めて観た人たちも、きっとこんな気持ちになったんだろうなあと思います。

色が与える印象って本当に大事。
これはこの作品の一つのテーマにもなっています。
その後も、レトロなドレスから庶民的なブラウスまで、綾瀬はるかはシーンが変わるたびにどんどん衣装が変わります。
もはや登場人物のファッションを楽しむだけでも十分なほどの眼福映画となっております笑
綾瀬はるかだけでなく、普段モデルとして活躍している本田翼の「いわゆるお嬢様」的なファッション・ヘアスタイルも素敵です。

真っ白な日傘なんか持っちゃったりしてね笑
個人的には坂口健太郎演じる主人公のファッションもなかなか魅力的。

ダボパンとベストのセットアップにヨーク付きのドリズラージャケットを合わせて、
雑用をやりながらも、映画の助監督として作業着にはならないようにしている。
ノンノ、メンズノンノそれぞれのトップモデルの共演が味わえる映画として観ても面白い!
しかし、この映画の魅力はそこだけじゃありません!
邦画って(あくまで邦画をあまり観ない僕の個人的な意見ですが)役者に比重が置かれがちと言うか、あくまでこの俳優あってのこの映画、って言うのがいい意味でも悪い意味でも多いような気がします。
(劇中で言えば「〜とハンサムガイ」シリーズ(北村一輝演じる売れっ子俳優の主演映画)みたいなもんですね。流石に誇張しすぎですがフィクションではないことも間違い無い笑)
でもこの「今夜、ロマンス劇場で」は脚本もかなり力入ってると思います。
まず、ストーリーの展開方法として、昔話形式で進んでいきます。
病院にいるおじいちゃんが、昔あった話として看護師に語る、と言うスタイルです。
これが終盤になって意外な展開に繋がっていきます。
(看護師の演技が微妙すぎて急にテレビドラマかな?と思っちゃうのは残念なところですが笑)
設定で言えば、いわゆる身分差恋愛とでも言えばそうくくれちゃうわけですが、そう言う映画には大抵「タイムリミット」的なものが設定されてますよね。
いわゆる「元の世界に帰らなくちゃいけない」的な設定。
ずっとはいられないからこそ、ロマンチックになるわけですから、まあ今回もそんなことだろうなあと思って観ていると、そんな単純じゃ無いんですね笑
そこに、この映画の挑戦的な部分を感じました。
それゆえ、ラストにかけて少しアクセントの効いた展開になっています。
もちろん、めちゃめちゃ感動します。
また、主演以外の登場人物にしっかり花を持たせている所にも好感が持てます。
まずは本田翼演じる社長令嬢。
もうね、僕はこの映画観て本田翼に惚れちゃいました笑
いい子すぎて!
この社長令嬢、最初から主人公に恋しています。
いわゆる三角関係なわけですね。
普通そうなったら綾瀬はるかは恋敵な訳ですから、バチバチしたっておかしくないし、
社長令嬢としての権力を駆使して邪魔するんかなあと思いきや、しない笑
むしろ主人公を全力でアシストします!
それがもう切なすぎて・・・。
後半の主人公と社長令嬢の会話が、この映画で一番切ないシーンだと個人的には思います。
すごく意外でした笑
そして、北村一輝演じる超売れっ子俳優。
冒頭ははい、出ましたー!って感じのしょうもなさで、周りに弟子を侍らして、自分の一存で映画の脚本を作り直させたり、わがまま放題な奴なんかなと思いきや、彼もまた大事なところでしっかり主人公を後押ししてくれます。

思い返せば訳もなくぶん殴られて気絶したり、ダイナマイトの爆発で大怪我したりとんでもない目に合いながら、決して不平を言わず前向きに役者を続けるただの良い奴だったりします。
ロマンス劇場の支配人も、初めは貧乏な主人公からしっかり金とるさもしい奴かと思いきや、ラストでしっかり男前を見せてくれます(金とるところがしっかり伏線になってたり)。
二時間弱でここまでいろんな人を活躍させる丁寧さも、この映画の素敵なところだと思います。
そういうところでも、脚本にしっかり力が入っているなと感じました。
あとこれは完全に偶然だし余談ですが、この物語の語り手である病室のおじいちゃん=昔の主人公を演じた加藤剛は、映画公開の四ヶ月後に亡くなっています。
撮影中もガンによる体調不良を悟られないよう振舞っていたそうです。
それを踏まえて観ると、また一段と深みが違ってきますね。
長々と語ってしまいましたが、
王道ロマンスとして、シンプルに楽しめる作品だと思います。
昭和レトロな雰囲気や衣装が好きな方は特に。
似た設定でこれまた名作の「カイロの紫のバラ」と見比べてみても面白いかもしれません!
(こっちは配信が無いのでTSUTAYAなんかで借りないといけないのですが・・・)